メッセージ

漢方と陰陽論

さて漢方の概念の一部に、「陰陽論」が存在します。これは例えば、表と裏、天と地、背と腹、男と女、上と下、という風に、人類と取り巻く万物は相反する2つの側面から構成されていて、前者を「陽」、後者を「陰」と呼ぶ考えの事です。

この点、西洋の芸術に於ける、光と影の類のコントラスト(対比)の効果を、連想されるかも知れません。実際、芸術も高度な境地に達すると、その表現には必ず対比の技巧が潜んでいる筈です。又、「一切は相対とある」と説く宗教も存在する様です。

ところが漢方に於ける「陰」と「陽」とは、一対の関係にあります。例えば、明暗、冷暖、動静、男女、の場合で見て参りましょう。ここでは、暗、冷、静、女の側は、「陰」の範疇に分類されます。ところが、明、暖、動、男、の側は、「陽」の範疇に分類されるのです。

とは言え、漢字の意味の通りに、「陽」は明るくて良い、「陰」暗くて悪い、という解釈するのは間違いです。何故なら、晴れた暑い日が続いた後には冷たい雨が降らなければ、農作物も水も人間には与えられない様に、陰陽は両方が必要不可欠だからです。この様に「陰陽」とは、一方が強まるともう一方は弱まるという風に、刻一刻と均衡を保ちながら存在しているのです。

ところで人間の体にも、陰陽が存在するのです。この陰陽は体内で常時頻繁に変化しながら、その均衡を保持しています。その具体的な例ですが、先ず「陰」は物質的な範疇に入り、肉体や「血」「水」を示しています。ところが「陽」は機能的な範疇に入り、内臓の働きや「気」を示すのです。

仮にこの「陰・陽」の均衡が崩壊すると、発熱や悪寒等の症状が起こります。従って、この陰陽の調和が保たれている時が、健康な状態という事になる訳です。

これは食物に於いても、同様に該当する概念です。特に漢方に於いては、辛い味や甘い味は「陽」に属し、酸味や塩辛い味は「陰」に属すると解釈します。更には、「温」の食材は「陽」に、「寒」の食材は「陰」に入ります。

実際にも、寒冷地では温かな鍋物が囲まれ、蒸し暑い夏は身体を冷やす胡瓜(キュウリ)や茄子(ナス)が食されています。この様に、人間は無意識の間に、陰陽の均衡を保ちながら生活しているのです。

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