漢方の未病

漢方の考え方の一種に、「未病」が挙げられます。この未病とは、病気と健康の間を指し、言い換えれば病気の一歩手前の状態です。この未病を西洋医学で表現するなら、「検査結果では異常は認められないが、病気になりかけている状態、若しくは完全に健康とは言えない状態。」となります。

この未病はその多くの場合、頭痛、肩凝り(こり)、耳鳴り、倦怠感、朝起きが辛い等、様々な自覚症状で現われます。例えば、健康診断で異常が発見されたのにも拘らず、本人には自覚症状がない場合が未病に該当します。この他現在に於いては、生活習慣病等も未病と捉える様になっています。


これは特筆すべき事ですが、自然科学の範疇に入るとされる西洋医学に於いては、人間の治療よりも病気の根絶の方が優先される傾向があります。この傾向は、患者を殆ど見ないで検査結果ばかりを見るという、検査結果偏重の医師が多い現状を見ても明白です、これは極端な言い方をすれば、この検査結果から導き出された病気か否か、この観点に立って治療の必要性の有無が決定される訳です。

ところがこの点が漢方では、全く異なって来ます。何故なら漢方に於いては、病の撲滅よりも人の治癒の方が優先されるべきとの、信念が存在するからです。従って漢方に於いては、未病であっても治療の対象とされ、漢方薬が処方されるのです。

やはり身体の不調を放置すれば、不調の原因は体内で密かに育まれ、やがては病気へと潜行します。ここで一旦本格的な病気に罹患してしまうと、健康な身体を取り返す為には、大変な時間と労力を要する筈です。だからこそ未病の段階で早期に対処し、体質改善を実行するのです。そうすれば重篤な病気への進行が予防出来ますし、何よりも大切な健康な身体を一刻も早く取り返す事が可能です。

ところで現代の30歳代から50歳代の男女を対象として、未病に関して調査した結果、何と男女揃って8割以上の人が未病の状態にある事実が判明しています。ところが現代人の大部分は、身体の不調を自覚していながらも、適切な処置を行なっていないのが実態なのです。

ところが現代に於いては西洋医学の世界でも、予防医学が重要視される様になりました。かつて漢方で熱心に説かれて来た未病の概念は、今や西洋医学に於いても予防医学の原点とされ、未来の医療現場に於いても脚光を浴びて行くに相違ありません。

 

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