漢方と産後
- 詳細
- カテゴリ: 漢方の実践
女性の身体は妊娠すると、出産までの期間は子宮の中で胎児を育みます。そして出産という大事業を完了すると、次には本格的な育児が開始します。この様に、妊娠出産を通して、女性は外見内面共に大きく変化しつつ、母親の役割を果たして行くのです。まさに妊娠、出産、育児を体験する、この期間の女性の身体は、ホルモンの嵐の中を潜り抜けると称しても、決して過言ではないのです。
この中でも、出産直後から数か月迄の期間は、不慣れな育児と家事により、心身に対する負担が大きくなります。この様な環境の激変に不適応を起こし、産後うつに陥る女性は少なくありません。特に、身体面に於いては、授乳や身体回復の目的で、大量の血液が必要とされます。何故なら母乳の成分は血液を同一だからで、新生児に吸わせる時に母体の血液が母乳に変わると、ある産婦人科医によって説明されている位です。ところが実際には、子宮の機能が完全に回復していないが故に、身体の血行が停滞を起こし、新しい血液を作り出せない状態に陥る場合もあるのです。
この点、漢方に於いては、この時期は血液が不足し易い状態にあると、最初から説かれています。この様に、産後の肥立ちが進まない状態は、「…血」に陥っている事が原因にあるのです。
特に産後には、下腹部に痛みが残ったり、母乳の分量が少なかったり、便秘が継続したり、寝汗や嘔吐や下痢等の症状が出る場合があります。この場合は血の不足に伴う、産後の肥立ちの遅れが原因となり、体調に悪影響を与えていると解釈出来るのです。
そこで漢方に於いては、この様な肥立ちが悪い際の治療法として、先ず血行を促進する漢方薬を処方します。この後に、血液不足を補充する漢方薬、自立神経の均衡を制御する漢方薬、これ等を症状に応じて、組み合わせて処方するのです。この他にも母乳の出が不充分な状態や、乳腺炎の症状にも、漢方による治療が効果的です。
この産後とは女性の今後の人生を健康に過ごす為には、非常に大切な時期と言えます。そもそも出産と育児を契機として、体質が一変する女性は少なくないからです。従って、副作用のある現代医学の新薬とは異なり、身体への負担が殆どない漢方薬なら、母乳に溶け出しても心配はありません。この様に母乳育児が続けられる事が、漢方薬使用のメリットの一種なのです。
因みに余談ですが、産後7,8月目頃は頭髪の質が衰え易い時期ですから、パーマや毛染め等を復活して負担をかけずに現状を維持すれば、健康な髪のままこの時期を無事に乗り切れるかも知れません。更には、新薬等の服用に伴い胎児への授乳を一時停止する場合には、毎回の搾乳だけは励行しないと母乳は永久に止まりますから、くれぐれも御注意なさって下さい。